軍隊がないからこそ可能な独自外交を展開してきたコスタリカ。その道のりは決して平坦ではありませんでした。しかし常に「逆転の発想」で国難や有事を乗り切り、非武装こそ最大の防衛力であるという結論が国民的合意となっています。

ファーストレディ外交で紛争解決

 内戦が続いていた1980年代の中米。軍隊がなければ内戦は起こりません。でも、周囲の紛争を止めなければ、火の粉が降りかかってきます。

 そこで、女性たちが活躍しました。元ファーストレディが各国のファーストレディをコスタリカに招いて、各国で続く殺し合いを止めるための方法を考え、実行に移しました。それが、1987年の中米和平交渉を妥結へと導きます。女性として、母としての目線が、そこにはありました。

平和の輸出

 コスタリカでは、1948年に選挙における不正をきっかけとして内戦が起こったことから、民主主義こそ平和の礎だという考え方が定着しました。同様に、近隣諸国に安定した民主主義体制が定着すれば、それが自国と地域の安全保障につながります。そこでコスタリカの選挙最高裁判所は、周辺諸国の選挙制度の構築に積極的に関わり、内戦や軍事政権などで荒廃した政治文化を平和化していきました。

長期的ビジョンを持った戦略的外交

 コスタリカは10年〜30年単位の長期的戦略外交が得意です。

 米州人権裁判所の設立、国連高等弁務官事務所の設立、気候変動枠組条約締結国会議におけるパリ協定、核兵器禁止条約など、コスタリカの長期的外交戦略によって、世界に平和をつくる数多くの業績が達成されました。

 それらの成果は、安定した民主主義に支えられています。政権が変わっても、社会で大事にしなければならない価値観までは変わりません。もちろん、価値観を煮詰めるまでに、相当の時間と労力を費やしています。その時間と労力を捻出するために、軍隊がないことがプラスに作用しました。他の国が軍事オプションを持ち続け、そのための対価を支払っている間に、コスタリカは独自の戦略を練り、行動に移し、粘り強く動き続けてきたのです。

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