どんなに平和を望んでも、争いは次から次に絶えず起こってしまいます。

 そこで、争いをいかに平和的に解決し、また争いそのものを平和に「転換」する方法を考えるのが、紛争解決学と呼ばれる学問です。

「紛争」とは何か

 紛争解決学では、「紛争」(コンフリクト)を以下のように定義します。

異なるアクターが、同時に達成不可能な目標を追い求めて行動する時に生まれる対立やいさかい

 たとえば、領土問題。

 ある地域を巡って、2国が互いに領有権を主張しているとします。

 普通に考えれば、どちらかの領土になれば、もう片方の領土にはなりません。

 つまり、片方の目標が達成されれば、もう片方の目標は達成できません。

 こういったときに、紛争は起こります。

紛争を構成する要素は何か

 紛争の定義の中に、「アクター」という言葉が出てきます。これは、その紛争のストーリーの中に出てくる「登場人物」です(もちろん人物だけとは限りません。組織のこともあるし、動植物のことだってあるでしょう)。領土問題でいえば国家が主なアクターになりますし、兄弟喧嘩だとすると兄弟という個人がアクターになります。

 目標とは、アクターの望みです。

 このたった2つだけで、紛争は構成されてしまいます。いかに簡単に紛争が起こるかがわかるでしょう。

 一方、構造がわかれば、その解き方も見えてきます。

 そのひとつが、平和学の父であるヨハン・ガルトゥング博士が編み出した「トランセンド法」です。

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